わたしのみだし

見出しだけでも読んでください

8900円分は楽しんで

起床時間は忘れたし忘れるほどどうでもいい。6時に起きたから何だと言うんだ。

 

友人がすこし離れたところから腕組みしながら薄いマッチングアプリ攻略法を語ってくるが、彼にマッチングアプリで恋人ができた実績はない。せいぜい好きな音楽を訊いて集めたプレイリストを作っただけだ。話半分にしたあと水で10倍に希釈してトイレに流すくらいでちょうどよい。ただ、そのプレイリストで知ったポツというアーティストは好みでよかった。

 

やるしかないのだ……俺は……という気持ちでプロフィールを入力する。書きすぎても書かなすぎても良くないと世間的には言われていそうだな、と思いながら自己流で完成させる。当たり障りのなさと少しの違和感の緩急を意識した。しばらくするとマッチングが成立してメッセージが送れるようになる。①素早く返信するのが大事だから短くてもとりあえず軽く挨拶しろ②最初のメッセージは非常に大事だから相手のプロフィールを見て熟考しろ③真剣に考えたところで返信があるとは限らないから早いうちに定型文を作ってしまえ。天使と天使と悪魔が頭の上をまわる。でも僕はこういうのを力抜いて適当にはやれない。だってアプリの裏には人間がいるから……(誠実なんだよな、ウン)。

 

この前買った刺繍キットは完成すれば来年のカレンダーになる。月ごと12のスヌーピーのイラストがプリントされていて、その上から刺繍するようになっている。刺繍の最初にやること。それは輪になっている刺繍糸の束をまっすぐに伸ばしてから折りたたみ、1メートルの長さに切って三つ編みにすること。こうすると糸を取り出しやすく、保管もしやすくなる。束が絡まってしまって泣きそうになりながらもなんとか7本の三つ編みが出来上がった。

 

夜は昨日から塩麹に漬け込んでいた豚肩ロースで蒸し豚を作る。「3分強火30分弱火、火を止めて20分休ませる」という手順が蒸し料理のレシピ本に書かれているが、この本にある大体の料理がほぼ同じ手順だ。でもそれでいい。レシピ本はうまそうな写真でもって食欲と料理欲を刺激することが仕事だから。友人は大量の野菜で鍋を作ってくれた。どちらも抜群にうまい。

 

男はメッセージに返信するために有料会員にならなければならないシステムで、そりゃそうだよね、と3ヶ月分を課金。何往復か会話が続いたあと、電話ができるようになったので、週末電話しましょうという約束を取り付けた。あっさり事が進んで嬉しいやら恐ろしいやらという気持ちと、今自分は面白いことをやっているなというメタ自己を楽しんでいる。少なくとも8900円分は楽しんでやる。結局今日は三人とマッチして、一人は電話の約束、一人はメッセージやり取り中、一人は返信なしという結果だった。これは何円分だ?